2022年総括【映画】

こんにちは、プロムナードギャラリーです。

年1でデュア・リパになりたいと思い、月1でちあきなおみになりたいと思い、毎日概念になりたいと思っています。

 

2022年に見た映画を総括します。

こちらで最後です。

もう5月って本当ですか?

 

【凡例と注記】

・タイトル横の()には製作国を入れています。

・「New Commer」は私自身が2022年に初めて観た監督の映画です。

・「Yester Hits」は、私が2021年以前から観たことのある監督の作品です。

・備忘として「Yester Hits」の最終行に、これまで観た同じ監督の作品を列挙しています。

・ネタバレまみれです。観る可能性のある作品の部分はとばすことをお勧めします。

A. 洋画他

1. New Commer

(1)BURN バーン(アメリカ)

面白く見られた。被害者側が実は危ない人だったという定型通りの話だけど、危ない人側がサイコキラーの男性じゃなく精神的に追い詰められた女性というところが新鮮。

場面展開がないのに、これだけ見せる映画になっているのもすごい。

(2)ミナリ(アメリカ)

おばあちゃんは好きだけど、最後にかけてのくだりはそこまでする必要あったかなと思う。

川べりにセリを摘みに行くシーンは印象的。自分のルーツに対する温かい気持ちが、自然を通して最も純粋な方法で表現されていて良かった。

(3)ワイルド・スピードアメリカ)

人気シリーズだけどこれまで見たことがなかった。車と筋肉がテーマの映画なんて。。と敬遠していたのだけど、WOWOWで一挙放送をやるというので、この機会に見てみようと思った。

冷やかし半分で見始めたのに、序盤からめちゃくちゃ引き込まれ、大変面白く拝見した。謎の敗北感。

(4)ファーザー(イギリス)

家族って難しいよね(月並みオブザイヤー)。

主人公よりも、認知症になっても妹を贔屓し続ける父親の世話をしなければならない娘がかわいそうだと思った。認知症になったことで思考が堂々巡りして、思いやこだわりが意図しない形で表れるところが、人間の卑しさを表していてしんどかった。

最後まで見ても主人公を憐れむ気持ちにはなれない。誰が悪いというのでもないけど、諸行無常だなって。

(5)ライトハウスアメリカ)

聖なる鹿殺しに続くA24のインテリ映画。インテリ部分は理解が及ばなかったけど、面白く見られた。

鳥を殺すシーンとか同僚の粗野な振る舞いとか、生理的に嫌だなと思うところを突いてきて、その嫌悪感が蓄積したものが最後にかけて爆発していくので見応えがあった。

結局一連の出来事の原因が何なのか、主人公の記憶が正しいのか間違っているのかわからないままだけど、最後に灯台の光を間近で眺めるシーンが印象的で、わからないなりに納得感がある。

あとはウィレムデフォーの演技がぶち抜けてて良かった。

(6)5月の花嫁学校(フランス)

女の子たちが可愛かったし言わんとすることはわかった。

最後のシーンでいきなりミュージカルが始まったのは解せなかった。

(7)パーフェクト・プラン 人生逆転のパリ大作戦(フランス)

このシリーズを見るのは3回目。

1作目ほどではなかったが、まとまっていて面白かった。

この制作チームのブラックユーモアは珍しく刺さる。突拍子もないタイミングで畳み掛けてくるので、考える間もなくゲス顔で大笑いしてしまう。今回は、主人公が犬を飼ってる盲目の人の家に不法侵入してベランダの窓を開けたところ、飼い主のいない間に犬がそこから飛び降りてしまい、帰ってきた飼い主は犬がいないことに気づかないというシーンで笑った。言葉にすると不謹慎すぎるけど、元気に飛び出す犬の勢いが良かった。

(8)若草物語(1994)(アメリカ)

2019年のリメイク版(後述)を見たので、併せて見てみようと思った。

30年弱前の映画なので話のテンポが今の感覚にそぐわない部分があったが、根本に素晴らしい原作があり、その原作へのリスペクトが感じられるしっかりした作りだった。

ウィノナライダーはじめ女優陣が綺麗で、衣装も美しく眼福。

(9)サリー・ポッターのパーティー(イギリス)

ネットフリックスシリーズの「ピーキーブラインダーズ」で有能な役をやっていたキリアン・マーフィーが、情けない役をやっていて新鮮だった。

同じ家の中での会話劇なので場面転換はほとんどないのに、最後まで目が離せない。

ラストシーンはちょっと冷めてしまった。LGBTがテーマの映画は増えているけど、筋書きから離れたところで飛び道具的にそういった内容が盛り込まれているのを見るともやっとする。

(10)PITY ある不幸な男(ギリシャポーランド

思わず笑っちゃうような面白いシーンもあったのに、最後が衝撃すぎた。

ブラックコメディはついていけないときとことん置いてけぼりになる。

(11)勝手にしやがれ(フランス)

昔の映画を見たときによく思うことだけど、いろんなベクトルでしっくりこない。作られてから時間が経っていることによる価値観の根本的な違いがあり、その上で登場人物には全く共感できない。

そのセリフをそのシーンで言わせる意味と、全体を通して伝えたいことが汲み取れなかった。

(12)ミシシッピー・バーニングアメリカ)

2022年に見た映画で5本の指に入る。

映画的な面白さと社会的意義を兼ね備えた映画はなかなかないけど、この作品はそうだと思う。

教会が燃やされるシーンが映画のテーマを端的に表しつつ、記憶に残る映像だった。このテーマを伝えるために最適な媒体が映画だったんだなと納得できる。

ウィレムデフォーがちゃんとした役(凶悪犯罪に手を染めたり奇声をあげたりしない)をやっているのを初めて見たのと、フランシスマクドーマンドがまともに美人の奥さん役をやっていてびっくりした。スリービルボードノマドランドの演技が記憶に新しく、アカデミー賞での遠吠えスピーチもなかなか衝撃的だったので、今回の演技とにわかに結びつかなかった。

(13)DUNE/デューン 砂の惑星アメリカ・イギリス・カナダ・ハンガリー

リメイク前のリンチのDUNEを見たことで感動が増した。今の映像技術すごい。この作品は2020年に作られるべき作品だったと思う。リンチもめちゃくちゃ頑張ったけど、技術が追いついていないために製作費だけが嵩んでしまった印象がある。

宇宙戦争ものはスターウォーズしか見たことがなかったけど、DUNEは主人公の貴公子度(?)が高いのが良い。スターウォーズの登場人物は活発だけど、DUNEは主人公が最初から王子で、キャスティングも王子っぽい人をあてている。リメイク前はカイルマクラクランで、リメイク後はティモシーシャラメなので、いつの時代も王子様の人物像というのは変わらないんだなと思った。

しっとりした雰囲気の登場人物と、シンプルで美しい建造物や整然とした空間の取り方などが相まってスタイリッシュな映像になっている。映画として面白いというのはもちろん、プラウドのモデルルームを50軒くらい見学したあとみたいな気持ちになる。

(14)パーフェクト・ケア(イギリス)

ゴーン・ガールが好きなので期待していたが、今回は個人的にそれほどでもなかった。

やられてやり返すのはいいんだけど、やり返し方とシチュエーションに現実味がない。敵の行動の詰めが甘いし、ロザムンドパイクとその恋人が不死身すぎる。

(15)アンホーリー 忌まわしき聖地(アメリカ)

恐怖の対象に姿があると怖くなくなってしまうんだけど、これがそう。最後に化け物が出てきて萎えた。

主人公と地元の女性がくっつくところも安易に感じた。映像頑張った割にはお茶の間サイズのホラーになってしまった感が否めない。

(16)ワンス・アポン・ア・タイム・イン・上海(中国)

浅野忠信チャン・ツィイーが共演しているというので気になって見てみた。

浅野忠信の眼差ししびれる。支配者度100億点。

映画として見応えはあったけど、疲れてしまうのでまた見たいとは思わない。

(17)ウィドウ 怪物の森(ロシア)

ホラー映画は脅かす側の姿形がよくわからない方が怖いと思っているけど、今作では最後まで実態がないものに襲われ続けるためそこがよかった。しかし、襲われている理由が最後まで判然としなかったのが残念だった。伏線になりそうな意味深なカットがたくさんあったのに、回収しきれていない。全部繋がったら最高に怖かったのにと思う。

(18)007 スカイフォールアメリカ・イギリス)

ハビエルバルデムの出演作を初めてちゃんと見たが、めちゃめちゃ演技派。

最後のシーンとか気持ち悪すぎて鳥肌たった。人間の気持ち悪さをあそこまで凝縮して表現できるの本当にすごい。

ボンドガールの定義が曖昧な回だったけど、話が面白かった。

(19)007 スペクター(アメリカ・イギリス)

クリストフ・ヴァルツの圧倒的存在感。出てくるだけで画面が締まるというか、独特の雰囲気がある。

レアセドゥもそう。登場の瞬間から釘付け。

役者に魅力があって話も面白かった。007シリーズで一番好き。

(20)007 / ノー・タイム・トゥ・ダイ(アメリカ・イギリス)

ボヘミアンラプソディでパッション溢れる善人の演技をしていたラミマレックが、ボソボソ喋る極悪人を演じていたので、いろんな役やらなきゃで大変だなって。

オチに衝撃を受けた。思ったよりも悲しくて、アメリカのスパイ映画との違いを感じた。イーサン・ハントにはない繊細さで殴られるので、注意が必要。

(21)パフューム ある人殺しの物語(ドイツ・フランス・スペイン)

007シリーズのベン・ウィショーが主演というので気になって視聴。

ダスティンホフマンが出演していて驚いた。ヨーロッパ映画らしいフェティシズムの表現と、退屈しないストーリー展開の合わせ技で、流れるように全部見てしまった。主人公が最後まで人間性を獲得しないところが良い。

(22)ジェームズ・ボンドとして(アメリカ・イギリス)

6代目ボンド・ダニエルクレイグのドキュメンタリー。

ダニエルクレイグってすごいよ。まずメンタルが鬼。ボンドのキャストが発表されたとき批判の嵐だったらしいんだけど、自分に対する批判的なコメントを全部読んだうえで、前評判を跳ね返す体当たり演技で映画を大成功させたそうだよ。

正直自分もダニエルクレイグがタイプじゃないという理由で007シリーズを見てなかったので猛省。見てみて良かった。シリーズを通して素晴らしい俳優を知ることができたな。

(23)クーリエ:最高機密の運び屋(イギリス)

最初の時点で頬に詰め物してたとはいえ、ラストにかけてのカンバーバッチの痩せっぷりはすごかった。役者って大変だな。

この話は実話を元にしているそうだけど、実話とは思えない無茶振りエピソードで途中から腹がたってきた。セールスマンにスパイをさせるな(元も子もない)

(24)ぶあいそうな手紙(ブラジル)

ブラジル映画って初めて見た。

意図せずいい映画に巡りあった。老人と若い女の子の心の交流というよくあるハートウォーミング設定なんだけど、平凡なテーマを上回る魅力があった。

まずおじいちゃんがやりとりする手紙がめちゃくちゃ知的なのが良くて、女の子も女の子で、彼を伴って街頭のポエトリー対決(?)みたいなのに参加して、言葉を通じて感情を共有する描写がなんともいえず良かった。

(25)博士と彼女のセオリー(イギリス)

原題のまま「セオリー」で良かったのでは(邦題アンチ)

何度も言うようだけど、ハリウッド映画に脳みそを飼い慣らされているので、男女がうまくいかない展開だと気持ちが萎えてしまう。

博士が解き明かしたのが「時間」についての理論だったのが切ないといえば切ないね。時間によっていろんなことが変化したけど、人間そのときどきで幸せの形は違うわけだし、一概に悲しい話とはいえないと気を取り直したりしなかったり〜

(26)パリの調香師 しあわせの香りを探して(フランス)

特に期待しないで見てみたら良い映画だった。

調香師の仕事について初めて知ったので、終始興味を持って見られた。

ベン・ウィショーの変態調香師を見たあとだったこともあり、普通の調香師さんが見られてほっとした。

(27)ヒトラーの贋札(ドイツ・オーストリア

ユダヤ人虐殺と偽札作りという2大テーマがあり、非常に重い内容だった。

映画として話に起伏があったので集中して見られたが、実話が元になっていることを考え始めるとつらい気持ちになる。

(28)ディナー・イン・アメリカアメリカ)

冴えない女の子と不良の男の子のボーイミーツガール映画だと思ったら、想像の斜め上をいくぶっ飛び映画だった。

色々めちゃくちゃだけど、いくところまでいっちゃってるので好感度高い。

(29)秘密への招待状(アメリカ)

不思議な話だったけど好きだな。

良いことも悪いことも、ずっと同じトーンで描かれるのが良い。役者の演技はむしろ感情的なのに演出のトーンが変わらないので、没入するというよりかは客観的に見ているような気持ちになる。

孤児院で息子のように思っていた少年が、あっさり別れを受け入れたシーンが一番切なかった。結局元いた場所に戻ることが自然なんだなと、宿命論的な主張も感じた。

(30)復讐者たち(ドイツ/イスラエル

ヒトラーの贋札」にも出演していたアウグスト・ディールが主演。

こちらも実話に基づく映画で、ホロコーストが題材。

復讐が失敗に終わって本当に良かったけど、女性や子供を含め600万人を殺害しようとする意思を持たざるを得なかった人がいたことを知って、その気持ちに思いを馳せるきっかけになったので、意義のある映画だと思った。

(31)OSS 117 アフリカより愛をこめて(フランス/ベルギー)

007シリーズを履修した後に見たので面白かった。

冒頭の歌のシーンが一番笑った。本編は少しだれた印象。

2. Yester Hits

(1)キャリー (1976)(アメリカ)

リメイク版は見たけど、意外に本家を見ていなかった。

恐ろしいのは心霊現象ではなく人間だよね。宗教を盲信している母親が一番怖かったし、キャリーがその母親にだめにされていく過程がシビアでつらかった。

しれっとトラボルタが出演していて、うまくいかなかった版グリースみたいでおかしかった。

ブライアン・デ・パルマ:ミッションインポッシブル/アンタッチャブル

(2)日の名残り(イギリス)

アンソニーホプキンスのすごさを改めて感じた。

1993年時点で既に初老だったし、ヒロイン役との直接的に接触する描写は全くないのに、恋愛感情がびしびし伝わってきた。

相手の女性を見つめるシーンで動悸が止まらなかった(病気)。眼差しだけでこれだけの感情を伝えられる俳優もそんなにいないと思うわね。

ジェームズ・アイヴォリー君の名前で僕を呼んで/上海の伯爵夫人/モーリス

(3)善き人のためのソナタ(ドイツ)

アカデミー賞受賞作というので気になって見てみた。

題材が題材なので2時間以上かけるべき作品だと理解しているものの、長いと感じてしまった。入り込めなかった要因はキャスティングがリアルすぎて途中からつらくなったこと、東ドイツの圧政とは直接関係のないところで人が死んだことの2点かなと思う。

ハリウッド映画に慣れすぎると、不条理な展開やグラマー美女の不在を受け入れられなくなるので、気をつけなければならない。

フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク:ツーリスト

(4)ドラキュラ (1992)(アメリカ)

ゴッドファーザーの監督作とは思えなかった。衣装や美術は素晴らしかったが、この映画で何をしたかったのか理解が及ばない。ゴシックファンタジー&エロティックホラーをやりたい気持ちは伝わってきたが、映像の解像度が高い割に筋書きに粗があり、個人的には悪趣味に映った。

あとアンソニーホプキンスにあのような下卑た役をあてがわないでほしい。さすがの演技で嫌いになりそうだった。

フランシス・フォード・コッポラゴッドファーザー

(5)刑事ジョン・ブック/目撃者アメリカ)

アーミッシュに興味があったので見て良かった。

親子が事件に巻き込まれる様子とハリソンフォードとの恋愛模様、事件解決までが流れるような筋書きで、面白く見られた。

ピーター・ウィアー:ウェイバック 脱出6500km/トゥルーマン・ショー/いまを生きる

(6)ウエスト・サイド物語アメリカ)

意味なく人が死ぬとイライラしちゃうんだけど、意味なく人が死んだのでイライラした。

あと不良なのにみんなで踊って歌うのが面白かった。

ミュージカルをまじめに見られないので、スタートから負けていた。

画面の色味はさすがだった。ジェッツとシャークスが同じダンス場で踊るシーンで、衣装の色でジェッツかシャークスかわかるようになっているのがすごい。着ているものの違いが、ひいては抗争の根源でもある人種・文化の違いにも結びついていて、色々な意味で効果的。

ロバート・ワイズサウンドオブミュージック

(7)ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語

同じ監督のレディ・バードはそうでもなかったんだけど、今回はシアーシャローナンとティモシーシャラメのもだもだエピソードがうまい具合にコミカルに切なく混ぜ込まれていたと思う。

役者がフレッシュで話の流れも不自然なところがなく、若草物語の現代版解釈という試みが成功していた。

グレタ・ガーウィグレディ・バード

(8)恐怖のメロディアメリカ)

この時代に新しい内容だったのではと思う。

一時期クリントイーストウッドの監督作を集中して見ていたんだけど、どんなテーマでも良い意味で万人受けする娯楽映画を作れる人だと思った。

この作品は初監督作品だったらしく、これまでの大ヒット作をたくさん見た後では初々しく感じる部分もあった。でもこの時代にしては新しい内容だったと思うし、独特の視点が冴え渡っていてさすがだと思う。

クリント・イーストウッド:リチャード・ジュエル/運び屋/15時17分、パリ行きインビクタス硫黄島からの手紙父親たちの星条旗ミスティック・リバートゥルー・クライムマディソン郡の橋パーフェクトワールド

(9)砂の惑星アメリカ)

ティモシーシャラメのリメイク版と勘違いして録画したら、リメイク前のリンチのカルト映画だったので笑った。

カイル・マクラクランをはじめ出演者の何人かが、リンチ監督のツインピークスというドラマにも出演していた役者だった。ツインピークス大好きなので嬉しかった。

多額の製作費を投じた割に全く成功しなかったそうだけど、頑張って作ったことも成功しなかった理由もわかったので悲しくなった。あと、リンチがやりたいことは40年前から変わっていないんだなってこともわかった。映画としての出来不出来の前に、監督の趣味が全開だったので見た甲斐があったと思う。

デヴィッド・リンチ:ラッキー(2017)/マルホランド・ドライブロスト・ハイウェイワイルド・アット・ハートブルーベルベット/エレファントマン/イレイザーヘッド

(10)Summer of 85(フランス)

キラキラBLだと思ったら死についての話だったので、思わず色々考えさせられた。

自分が死んだらお墓の上で踊ってほしいという願望も、恋人の遺体に会うために女装までして火葬場に忍び込む主人公も、あくまで肉体を第一に考えているところが若者らしくて切ない。

フランソワ・オゾン:17歳

(11)007 / カジノ・ロワイヤルアメリカ・イギリス)

ダニエル・クレイグの007シリーズを一挙放送するというので、最初から見てみることにした。

エヴァグリーンが大好きなので、終始眼福だった。最後うまくいかないのはイギリス映画らしい。

後日ダニエルクレイグを特集したドキュメンタリーを見たときに、シャワールームのシーンでヒロインが下着姿でシャワーに打たれているとしていた演出を、服を着たままにするようダニエルクレイグ自身が進言したというエピソードを知ってすごいなと思った。人気シリーズの主役を演じるだけでも大変なのに、作品を客観的に見て自分の考えを製作側に伝える余裕とセンス。ボンド役にふさわしい人だと思う。

実際そのシーンはエヴァグリーンが服を着た状態で撮影されて、下着で撮影するより視聴者に訴えかける映像になっていると思う。気丈に振る舞ってきたヒロインの余裕のない心中が、服を脱ぐことも忘れてシャワーに打たれているという状況に表れているし、その状態の彼女をボンドが抱きしめることで両者の関係が安易なものではないことを象徴していて素晴らしい。

マーティン・キャンベル:レジェンドオブゾロ/マスクオブゾロ

(12)愛と精霊の家(ドイツ・デンマークポルトガル

ほんのりファンタジーなんだけど、一族が歴史に翻弄される大河ドラマでもあり、不思議な映画だった。演技はメリルストリープが全部持って行っていた。慈愛に溢れた役だったけど、腹の底から慈愛が滲み出ていた(?)。やりすぎると嫌味になりそうなものだけど、見ていて泣きそうになるくらい素直な演技だった。さすがにアカデミー賞受賞しすぎでしょと思っていたけど、こういうのを見ると納得する。

ビレ・アウグストレ・ミゼラブル (1998)

(13)ディア・エヴァン・ハンセン(アメリカ)

ミュージカル映画には疎いけど、話題になっていたので気になって見てみた。

最近のブロードウェイって攻めてるよね。内気なキャラクターが主人公というだけでも今まであまり見なかったのに、友人の自殺というテーマでミュージカル作るんだから、もうなんでもありだよ。

スティーヴン・チョボスキー:ウォールフラワー

(14)ライストナイト・イン・ソーホー(イギリス)

クイーンズギャンビットの女優さん、独特の魅力があって目が離せない。

ファンタジックホラーということで、そんなに怖くないだろうと思い見始めたら結構心理的に怖かった。数十年前と現在で時間が交錯しながら話が進んでいくんだけど、大昔じゃなくて微妙に前の時代設定が怖い。シャイニングと同類の恐ろしさ。

シャイニングと違うのは、生まれ変わりではなくご本人が登場するところかな。シャイニング属・思い出のマーニー類。

エドガー・ライトベイビー・ドライバー

(15)オールド(アメリカ)

終始ドキドキしながら見た。

最後にすべての理由がわかってなるほどと思った。種明かしにそこまでの感動はなかったし、これを見て深く考えることもそれほどないけど、映画としてスリリングな展開だったので見て良かったと思う。

M・ナイト・シャマラン:スプリット/ヴィジット/ヴィレッジ/アンブレイカブルスチュアート・リトルシックス・センス

3. 再視聴

(1)ローマの休日アメリカ)

吹き替えが新しくなったと聞いて金ローか何かで見た。テレビアニメの役をやっている時とまったく雰囲気違って、声優さんはすごいなと思った。

全体的に軽やかになったイメージ。池田昌子さんの特徴的なオードリーと重厚感あふれるグレゴリーペックの声も良かったけど、昔の品格を失わないまま現代版に解釈し直して声を当てているかんじが伝わってきて、感動した。

映画の内容については改めて語る必要もないけど、何度見ても良いラストだよね。

ウィリアム・ワイラー:コレクター/ベン・ハー

(2)ゴーストライター(フランス/ドイツ/イギリス)

これは好きすぎて何度も見返している。

元大統領の邸宅がスタイリッシュで、それだけでも見応えがある。

主人公が有能さを発揮してとんとん拍子に真相に近づいていくのも小気味良い。

話の内容も限りなくリアルなので、ラスト5分は何回見てもぞわぞわする。

あとはなんといっても音楽がいい。映画の内容にぴったりの不安を煽る曲で、耳に残っていつまでも不安。音楽がいい映画やアニメは高確率で見返したくなる。

ロマン・ポランスキー:毛皮のヴィーナス/戦場のピアニスト

B. 邦画

1. New Commer

(1)海辺のエトランゼ

少年たちのキラキラ青春プラトニックBLかと思ったら、結構しっかり濡れ場があってびっくりした。

BLの受容度が高まってアニメ化される作品も増えているけど、性描写のリミッターもゆるくなってるように感じられて、いい悪いではなくいちいち驚いてしまう。

(2)大魔神逆襲

ツッコミどころが多すぎて違う視点で見てしまった。

友達が一人川に流されたのに最後までノータッチな子供たちと、村人が酷い目にあっても子供が流されても最後の最後まで助けに来ない大魔神。もっと早い段階で逆襲すべきでは?

(3)エリ・エリ・レマ・サバクタニ

青山真治監督の小説を読んだことがあって面白かったので、どんな映画を作るのかと見てみた。

「謎のウイルスを治癒する音楽」を浅野忠信が演奏するシーンが多く、素人目には退屈だった。なんとなく伝えたいことはわかるけど、難解な音楽を草原で演奏する映像を延々と見続けるのには限界がある。

2. Yester Hits

(1)花束みたいな恋をした

坂元裕二の脚本は最高。

すべてのサブカル女がこの映画を見て号泣したと思う。

もっと二人で話し合えば済んだ話だとは思うけど、「これは自分のための映画だ」と思わせるものがあったので良かった。

土井裕泰ハナミズキ涙そうそう

(2)竜とそばかすの姫

中村佳穂の歌が素晴らしかった。

アニメ映画で声優でなく役者をあてがう文化には懐疑的だけど、成田凌が違和感なく声を当てていてさすがだった。

話は色んなアニメのパロディーみたいで全体的に既視感があったが、意図的にやっていると思うので監督の話を聞いてみたい。

ミレパは優勝していた。

細田守:バケモノの子/おおかみこどもの雨と雪サマーウォーズ時をかける少女

(3)GO (2001)

もう20年以上前の作品だけど、久しぶりにしっくりくる邦画だった。

主人公の置かれた状況を憐れむのではなくて、個人の悲しみにフォーカスしているところが良い。爽快感のある映画だった。

この年齢の窪塚君にしかできない演技だったし、この年齢の柴咲コウは可愛かった。

行定勲リバーズ・エッジ

(4)ときめきに死す

カットやメッセージ性が独特すぎて、作られた当時は先進的な映画だったと思うが、今見ても追いつけない部分がある。

カルト的な人気がありそうなので、この映画の大ファンに会って詳しく話を聞いて、作品の魅力を理解したつもりになってみたい。

森田芳光(君都道幸):間宮兄弟

(5)Avalon アヴァロン(日本)

画面がセピア色で出演者が海外の人なので、終始現実味がない。途中で白黒からカラーに切り替わる映画は見たことがあるけど、セピアのギャリギャリ映像からカラーのスムーズな映像に切り替わる作品はこれが初めてだったので、こんな作り方もあるのかと驚いた。ゲームには疎いのであまり入り込めなかったが、ゲーム好きな人は楽しめるのではと思う。

押井守スカイ・クロラGHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊

(6)犬神家の一族 (1976)

これまで意外に見てこなかったので、見てみて良かった。

正体を明かす青沼静馬は思ったより怖くなく、珠代さんは想像より図太かった。ボートに罠を仕掛けられても懲りずに何度もボートで湖に出るところとか、ヒロインにあるまじき強さ。

市川崑:鍵